米国株市場分析|業績は最強でも株は利回りで国債に負けた

米国株市場分析 / at a glance Layer 1 → 3 の3層構造 基準日 2026-10-03

米国株市場分析 ― 業績は最強でも株は利回りで国債に負けた

S&P500の先行益回り 5.26%(1÷19.0倍)が米10年債 5.28% を下回り、国債に対する株の上乗せ利回りは ▲0.02pt とマイナスに転じた。前週に警戒の目安とした水準を割り込んだことになる。一方で業績は過去最強で、Q3にEPS見通しを引き上げた企業は72社と2006年の集計開始以来で最も多く、1株利益の予想は四半期中に +1.4% 上方修正された。業績の強さが金利の逆風を打ち消し、米国株の代表指数であるS&P500は週 ▲0.27% にとどまった。市場体温は中立に据え置く。

市場体温
中立
前回9/28から据え置き。フェーズは②業績相場の後期
株の上乗せ利回り(益回り − 10年債)
▲0.02pt
5.26% − 5.28%。前週 +0.03pt からマイナスに転じた
米10年債利回り
5.28%
週 +10bp。雇用統計が弱かったのに上がった。30年債は5.63%
Q3のEPS見通しを引き上げた企業
72社
2006年以来の過去最多(旧記録65社)。うち44社がIT

結論:業績と金利の綱引きが続く

警戒の目安を割り込んだ

株を持つ見返りが国債を下回った。これは株価が高すぎるからではなく、金利が高すぎるからである。先行PER 19.0倍は5年平均19.8倍・10年平均19.1倍をともに下回り、6/30からの3カ月で株価 +2.0% に対し先行1株利益は +9.3% 伸びた。株価の上昇は利益の伸びで説明でき、割高とはいえない(確信度:高)。上乗せ利回りが +0.03pt まで縮んだ前週の分析は米国株市場分析|金利5%超で株の割安さは尽きたにまとめている。

体温を下げないのは、企業とアナリストがそろって業績見通しを引き上げているからである。差の ▲0.02pt は誤差に近く、1週だけの事実でもある。10年債が 5.35% を超えるか、差が ▲0.1pt 以下で定着すれば「中立(弱気寄り)」に引き下げる(確信度:中)。

今週の3つの変化

  1. 金利 景気が弱いのに長期金利が上がった9月雇用統計は +2.9万人(予想約9万人)・失業率 4.2% と弱く、10月の利上げ確率は 64% → 16% に急低下した。それでも10年債は 5.18% → 5.28% へ上昇した。利上げ観測が消えても金利が下がらず、財政や債券需給が金利を押し上げている(推測・確信度:中)。
  2. 業績 先週止まりかけた上方修正が再開したQ3の1株利益予想は6/30比 +1.3% → +1.4%($89.84)に戻った。押し上げたのはMicronの上振れ($33.42、予想 $31.77)。通常は四半期中に予想が下がるため、2四半期続けて上がるのは異例である。
  3. 供給 メモリとストレージで「供給が追いつく」論点が出てきた東芝はAIデータセンター向けHDDの生産能力を2027年度中に倍増させ、Seagateは ▲10.21% 下げた。Micronは決算が大幅に上振れたが、設備投資がほぼ倍のペースに増え、株価は週 ▲0.68% だった(確信度:中)。

体温を「中立(弱気寄り)」に下げる3つの条件

  • 1米10年債が 5.35% を超える今週は 5.28%。あと 7bp の上昇で到達する
  • 2上乗せ利回りが ▲0.1pt 以下で定着する1週だけでは判断しない。2週以上続くかを見る
  • 3Q3決算で1株利益予想の下方修正が始まる10月中旬からの決算シーズンで、業績の支えが崩れるかを確かめる

主要指標

10/2 終値
指標終値前日比週間
S&P5007,722.72+0.73%▲0.27%
Nasdaq10030,807.93+1.00%+0.65%
SOX
半導体
13,136.68+2.40%+3.69%
VIX15.31▲6.59%+2.96%
米10年債5.28%+4bp+10bp
ドル円157.83▲0.14%+0.41%
Gold先物$4,172.10▲0.72%▲3.45%
WTI原油$91.26▲1.73%▲1.24%

10/2は雇用統計の発表後に反発したが、S&P500は週間でマイナスだった。G7は4カ月で原油・軽油1億バレルの協調放出を発表し、WTIは下げたものの北海ブレントは約 $102 と高い。

上がったのはハイテクとエネルギーだけ

週間騰落率

10セクターETFの週間騰落(9/25比)。中央の縦線がゼロ。

1株利益の予想は通常と逆に上がった

FactSet 四半期中の修正率

S&P500の1株利益予想が、四半期の初めから終わりまでに何%動いたか。中央の縦線がゼロ。

業績予想と株価のずれ

今週の分析の核
業績予想の強いセクターが株価でも強い。増益率の低い金融とヘルスケアは株価も最弱で、割安だから買う局面ではない。
セクターQ3増益率内訳を開けると今週の株価整合
エネルギー+114.0%
前週 +111.4%
前提の原油は6/30比 +30%($90.42)+1.26%前提の原油と実勢のWTI $91.26 がほぼ一致し、先週のずれは縮んだ
IT+65.0%
前週 +63.5%
半導体(+130%)を除くと +24.4%。Micronの上振れが押し上げ+1.80%
SOX +3.69%
業績と株価がそろって強い
通信+51.5%Meta・EchoStarを除くと +12.0%▲2.34%Metaが週 ▲3.14% で2週続落
素材+29.4%Dow・Newmontの下方修正(▲9.0%)▲1.89%下方修正と整合
工業+14.6%—▲0.28%小動き
公共+6.9%—+0.81%52週安値圏からの自律反発
ヘルスケア+5.5%Incyte・Pfizerの下方修正(▲3.0%)▲2.65%週間最弱。業績予想の弱さと整合
一般消費財+3.2%—▲0.47%小動き
金融+3.0%JPMorganが上方修正を牽引▲2.46%長期金利の急上昇と預金流出の懸念が重い
生活必需品+2.9%Walmartの下方修正(▲3.3%)▲1.86%内需系は事実上の横ばい
STXSeagate Technology $848.99
買い → 中立 確信度 中 10/2 ▲10.21%

強気の前提だった「3社寡占で供給が絞られ、値上げできる」に初めて反証が出た。業績予想は上方修正が続いているため「売り」にはしない。

目標株価
コンセンサス $1,125(+32.5%)/自己評価 $950(+11.9%)
バリュエーション
予想PER 23.73倍・実績PER 61.08倍・52週高値から ▲25.9%
直近決算
直近12カ月の売上 $12.20B(+34.1%)・1株利益 $13.90(+105.3%)
きっかけ
東芝が約600億円を投じ、HDDの生産能力を2027年度中に倍増。容量シェアを10%強から中期30%へ
カタリスト
10/27決算:値上げを続けられるか、東芝の増産への会社の見方
最大リスク
供給が増えて値上げ力が弱まり、PERが切り下がる
TERTeradyne $449.04
買い → 中立 確信度 中 10/2 +8.00%

製品の評価は変えていない。引き下げの理由は、目標株価に届いて上値余地がなくなったことだけである。

目標株価
コンセンサス $446.47(▲0.6%)/自己評価 $455(+1.3%)
バリュエーション
予想PER 46.04倍・実績PER 61.64倍
直近決算
直近12カ月の売上 $4.46B(+57.9%)・1株利益 $7.29
新製品
次世代メモリテスター Magnum E2・光部品テスト Iris 100・Universal Robots の第7世代協働ロボット
カタリスト
10/27決算:メモリテスターの受注
最大リスク
目標到達後の利益確定・設備投資の循環・アドバンテストとの競合
MUMicron Technology $1,074.89
中立(強気寄り)維持 確信度 中 週 ▲0.68%

決算は大きく上振れたが、設備投資がほぼ倍のペースに増えた。景気循環株では、利益のピーク圏での大型増産は天井のサインになりやすいため、格上げは見送る。Micronが時価総額1兆ドルに届いた背景はマイクロン株+5%急騰、時価総額1兆ドル突破の3つの理由で解説した。

目標株価
コンセンサス $1,520.02(+41.4%)/自己評価 $1,150 → $1,250(+16.3%)
バリュエーション
予想PER 6.09倍・実績PER 14.46倍・時価総額 $1.21兆
直近決算
FQ4 売上 $54.23B(予想 $51.07B・前年比 +379%)・粗利率 87.0%・1株利益 $33.42
次の四半期
会社見通しは売上 $61.5B・粗利率 86.25%・1株利益 $38.15
カタリスト
HBM4の量産・大手クラウド各社のQ3決算での設備投資計画
最大リスク
設備投資(次の四半期 約$115億・上期 約$250億)による供給過剰

企業もかつてなく強気になった

今週のトピック

Q3のEPS見通しを出したS&P500の116社の内訳と、アナリストの予想修正。

見通しを引き上げた企業の比率
62%
72社/116社。5年平均 40%・10年平均 41%
見通しを引き下げた企業
44社
5年平均62社。2021年Q3以来の少なさ
引き上げの中心
72社のうち 44社がIT(ソフトウェア12社・半導体11社)。ITとしても過去最多に並ぶ
Q3増益率の予想
+29.5%(6/30時点 +26.7%)。実現すれば3四半期連続で25%超
上方修正が大きい
エネルギー +18.0%・IT +3.5%(1株利益予想、6/30比)
下方修正が大きい
素材 ▲10.2%・生活必需品 ▲4.0%・ヘルスケア ▲3.3%
この先の増益率
Q4 +27.6%・2026年 +32.4%・2027年 +15.8%。2027年Q2は +2.3% に急減速の予想

強さはITと半導体に偏っている。半導体を除いたITの増益率 +24.4% も5年平均(13.3%)の約2倍だが、内需系の増益率は2〜3%台にとどまる。来年半ばに増益の伸びが急に鈍る予想も、いずれ株価に織り込まれる(確信度:中)。増益率が一部の業種に偏る構図はS&P500の増益率は実態より強く見えるでも取り上げた。

次に確認すべきこと

日付順
時期イベント注目点
10/9FactSet 次号Q3決算の初期結果。上方修正が続くか
10月中旬9月CPI雇用の減速の中で物価が鈍るか。長期金利の方向を決める
10月中旬〜Q3決算シーズン開幕①大手銀行の預金コストと保有債券の評価損 ②半導体以外のITの伸び ③エネルギーの実績
10月下旬FOMC利上げ確率は16%。据え置きが市場の前提
10/27Seagate・Teradyne 決算Seagateは値上げの持続性、Teradyneはメモリテスターの受注
継続株の上乗せ利回り▲0.1pt 以下で定着すれば体温を引き下げ
継続メモリ・ストレージの増産Micronの設備投資と東芝のHDD倍増。供給が需要に追いつくか
継続NVIDIAの出遅れ解消週 +3.95% でSOXを5週ぶりに上回った。翌週も続くか

出所:Yahoo Finance・Google Finance(指数・個別銘柄・セクターETFの終値)/FactSet Earnings Insight 2026-10-02 号(Q3 2026 予想・増益率・EPSガイダンス・先行PER)/米労働省 雇用統計/各社決算資料・アナリストコンセンサス。株価と騰落率は 2026-10-02 米国終値。

本ページは投資判断の材料であり、投資勧誘ではありません。判定と目標株価には推定が含まれ、確信度を併記しています。

ニューヨーク証券取引所(NYSE)外壁のWall St標識|米国市場

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