米国株市場分析 ― 指数の増益率は実態より強く見える
S&P500のQ3増益率 +28.9% は、実質的にエネルギー・半導体・Metaの3つが作っている。ITから半導体を外すと +24.2%、通信からMetaとEchoStarを外すと +11.8% まで落ちる。内需系は金融 +3.4%・一般消費財 +3.0%・生活必需品 +2.5% と横ばいで、米国経済は指数の増益率が示すほど強くない。市場体温は中立へ半歩引き上げたが、強気には転じない。
結論:利上げは出尽くし、フェーズ移行は宙づり
上値は限られる体温を引き上げたのは、3年ぶりの利上げを株式市場が上昇で通過したことが大きい。厳しいドットチャートにもかかわらずVIXは15.84→14.81へ低下し、利上げは「織り込み済みの事実」として出尽くした。原油の$100割れでインフレの二次的圧力も緩んだ。
それでも「強気寄り」まで上げないのは、上昇の中身が薄いからである。S&P500は週 ▲0.08% の横ばいで、上昇はSOXとハイテクに極端に偏った。③逆金融相場の主役(エネルギー)も②業績相場の主役(工業・素材)も買われておらず、フェーズ移行が宙づりの状態にある(確信度:中)。
今週の3つの変化
- 金利 3年ぶりの利上げを株式市場が上昇で通過したFOMCは9/16に0.25%利上げ(3.75〜4.00%)を12対0で決定。ドットチャートは18人中16人が年内の追加利上げを見込む厳しい内容だったが、株価は上昇しVIXは低下した。
- 原油 前週最強だったエネルギーが1週間で下位へ転落XLE は +1.69% → ▲1.27%。サウジアラビアがホルムズ海峡の外側・オマーンのソハール港沖で船から船への積み替えによりアジア向け追加供給を出し、WTIは9/15に約$106をつけた後、9/18は $99.53(前日比 ▲2.34%)で$100を割った。ただし週間では約▲0.5%にとどまる(9/11の約$100.05比)ため、週足で見れば往復しただけである。エネルギーセクターの工程別の序列は原油ではなく精製が不足している|下流が最も強い理由で詳しく整理している。
- 逆回転 金利5%の直撃を受けたのはディフェンシブと金融だった公共 ▲3.04%(52週安値更新)・金融 ▲2.43%。利上げ=利ざや改善という教科書的な反応が金融で起きなかった点は要注意(景気減速・信用コスト増を市場が重く見た可能性・推測・確信度:中)。
「強気寄り」にしない3つの理由
- 110年債5%が突破水準に張り付いたまま高PER株への最大の逆風
- 2年内の追加利上げを18人中16人が見込む利上げは1回で終わらない可能性が高い
- 3上昇がSOXとハイテクに極端に偏在S&P500は週 ▲0.08% の横ばいで、11セクター中9つが指数以下
主要指標
9/18 終値| 指標 | 終値 | 前日比 | 週間 |
|---|---|---|---|
| S&P500 | 7,650.50 | +0.17% | ▲0.08% |
| Nasdaq100 | 29,644.17 | +0.67% | +0.94% |
| SOX 半導体 | 11,921.69 | +2.78% | +0.83% |
| VIX | 14.81 | ▲4.08% | ▲6.50% |
| 米10年債 | 4.998% | +5.1bp | +2.3bp |
| ドル円 | 156.855 | +0.58% | +2.15% 円安 |
| Gold先物 | $4,424.90 | +0.57% | +0.36% |
| WTI原油 先物・期近 | $99.53 | ▲2.34% | 約▲0.5% $100割れ |
日銀も9/18に0.25%利上げ(1.25%・31年ぶりの高水準)したが、7対2の分裂採決とハト派的な会見でドル円は 153.55 → 156.855 の円安となった。
買われたのは2セクターだけ
週間騰落率10セクターETFの週間騰落(9/11比)。中央の縦線がゼロ。
S&P500は週 ▲0.08%。公共は52週安値 $41.08 を更新し、配当利回り2.83%が5%国債に見劣りした。ヘルスケアは前週が最弱(▲3.55%)で、その反動という性格が強い。同じディフェンシブが +1.83% と ▲3.04% に分かれたのは金利感応度の差である。
増益率の中身を開けると細る
FactSet Q3 2026 予想セクター別の増益率予想。縦線は集中銘柄を除いた値。
米国株の指数であるS&P500のQ3増益率 +28.9% は、実質的にエネルギー・半導体・Metaの3つが作っている。内需系(金融 +3.4%・一般消費財 +3.0%・生活必需品 +2.5%)は事実上の横ばいで、米国の実体経済は指数の増益率が示すほど強くない(確信度:中〜高)。増益率の読み解き方はFactSet解説|S&P500増益+28.6%の真実でも扱っている。
今週の株価は業績構造をそのまま鏡写しにした
今週の分析の核| セクター | Q3増益率 | 内訳を開けると | 今週の株価 | 整合 |
|---|---|---|---|---|
| エネルギー | +109.6% 6/30時点 +79.3% | 原油の6/30比+47%($101.91=FactSetの9/17基準)が前提 | ▲1.27% | 9/15の$106から9/18の$99.53への反落に反応。最大の脆弱性 |
| IT | +63.3% | 半導体(+126%)を除くと +24.2% | +1.03% SOX +0.83% | 買われたのは半導体だけ |
| 通信 | +51.0% | Meta・EchoStarを除くと +11.8% | ▲1.59% | 2社以外に恩恵が届かない |
| 素材 | +30.4% | Dow・Newmontの下方修正(▲8.4%) | ▲1.88% | 下方修正と整合 |
| 工業 | +14.2% | — | ▲1.52% | ②業績相場の主役も売られ続けている |
| 公共 | +6.8% | — | ▲3.04% | 週間最弱。金利5%の直撃 |
| ヘルスケア | +6.0% | Incyte・Pfizerの下方修正(▲2.6%) | +1.83% | 週間最強。前週最弱からの反動 |
| 金融 | +3.4% | — | ▲2.43% | 利上げでも売られた |
| 一般消費財 | +3.0% | — | ▲1.71% | 5週連続下落(報道ベース) |
| 生活必需品 | +2.5% | Walmartの下方修正(▲3.6%) | ▲0.70% | 内需系は事実上の横ばい |
今回の最大の判断。業績ではなく相対劣後による引き下げ。3週連続でAI半導体内の資金がNVIDIA以外へ向かった。AI銘柄の選別が始まった局面はNVDAとMSFTで明暗。AI銘柄の選別が始まった日で整理している。
- コンセンサス
- $327.70(+47.4%)
- フォワードPER
- 24.51倍(前回25.38倍から低下)
- 直近決算
- Q2 FY27 売上 $96.2B(+106%)・データセンター +117%。Q3ガイダンス $108B。業績は無傷
- 決定的な材料
- OpenAIがAMDを6GWの中核パートナーに指名。前回「確率:中」としていた物色分散リスクが、最大顧客の実際の発注として確定した(確信度:中〜高)
- 年初来
- +19.46%(AMD +161.40%・MU +256.11%)
- 再格上げ条件
- AMD・Micronに対する相対優位の回復
「売り」にしない理由:①業績は無傷 ②フォワードPERは低下し割高ではない ③上値余地+47.4% ④52週高値から▲6.0%でトレンドは崩れていない。
2週連続の週+8%台。材料は好転したが上値余地が半減したため「買い」にはしない。
- コンセンサス
- $616.51(+10.1%)/前回は +19.2%
- 自己評価
- $560 → $600 へ引き上げ。前回置いた$560に1週間で到達
- バリュエーション
- 実績PER 142.81倍・フォワードPER 約36倍(推定・確信度 中)・ベータ2.48
- 直近決算
- Q2 売上 $11.5B(+50%)・データセンター $6.7B(+107%)。次回 11/3
- カタリスト
- OpenAIの6GW契約(MI450から・最初の1GWは2026年後半)/Anthropic Helios 最大2GW/9/15 Raymond James「Strong Buy」格上げ・目標$641
- 最大リスク
- 上値余地の消失(確率 高)。52週高値まで +4.3% しかない。金利感応度も高く9/14には1日 ▲4.4%
9/30の決算まで判定を動かさない。株価が横ばいのままフォワードPERだけが下がる不信の構図が続く。
- コンセンサス
- $1,513.11(+48.9%)
- 自己評価
- $1,150(+13.2%)・新規設定
- フォワードPER
- 6.55倍(前回 約7倍から低下)。実績PER 22.96倍
- 9/30 決算
- 会社ガイダンス 売上 $50.0B±$1.0B・粗利率 約86%。市場予想は約$50.8B(前年比 約+350%)でガイダンスを上回る設定
- カタリスト
- HBM3E・HBM4が2027年通年分まで完売(需要は2028年まで)。SKハイニックスはDRAM需給の均衡を早くても2030年と予想
- 最大リスク
- フォワードPER6.55倍はシクリカル株のピーク利益シグナルであり、割安の証拠ではない。市場予想が会社ガイダンスを上回るため「Sell the News」リスク(確率 高)
二極化はセクター単位の現象ではない
今週のトピックQ2の決算説明会(6/15〜9/14)で「AI」に言及したかどうかで、株価の伸びが明確に分かれた。
- 言及社数
- 331社(5年平均178社・10年平均114社)
- 言及率
- 説明会を実施した493社の 67%。3四半期連続で65%超
- 件数上位
- IT 72社・金融 67社・工業 55社
- 比率上位
- IT 97%・金融 91%・通信 90%
市場は「AIを語れる企業」と「語れない企業」を企業単位で選別している(確信度:中〜高)。ただし言及率67%はすでに差別化要因としては飽和に近く、今後は言及の有無ではなく投資回収の実績で選別が進む可能性が高い。
次に確認すべきこと
日付順| 時期 | イベント | 注目点 |
|---|---|---|
| 9/30 | Micron FQ4決算 | 市場予想 売上 約$50.8B(前年比 約+350%)・粗利率 約86%。メモリサイクルの持続性を測る今期最大のイベント |
| 10月上旬 | 9月CPI・雇用統計 | 原油反落がCPIに反映されるか。10月FOMCの追加利上げ確率を左右する |
| 10月中旬〜 | Q3決算シーズン開幕 | ①エネルギー実績が原油下落でどうブレるか ②「AI」言及が331社からさらに増えるか ③内需系のガイダンス |
| 9/25 | FactSet 次号 | エネルギー増益率 +109.6% が原油下落で下方修正に転じるか |
| 継続 | 原油$100の攻防 | サウジの追加供給が続けば$90割れも。原油下落は指数全体の増益率の下方修正リスク |
| 継続 | 米10年債5%の定着 | 定着すれば公共・金融・高PERグロースへの逆風が長期化する |
| 継続 | NVIDIAの相対劣後 | 相対優位の回復が確認できれば「買い」へ再格上げ |
| 継続 | ヘルスケアと公共の分岐 | 同じディフェンシブで +1.83% と ▲3.04% に分かれた。金利感応度の差が続くか |