日本株市場分析 ― 投げ売りの形が出た、でも底打ちはまだ
11/6の日経平均は1日で ▲3,643円(▲5.96%)と史上3番目の下げ幅になり、週間では ▲9.25%。値上がり21銘柄に対し値下がり1,523銘柄、売買代金は12.5兆円、日経VIは44.60と、投げ売りが出尽くすときの形がそろった。しかし下げの原因は米国のAIデータセンター規制への警戒で、解消の時期が読めない。11/6の急落を受けた信用取引の損失もまだ数字に表れていない。市場体温は弱気を据え置く。
結論:業績ではなく米国の政策で売られた。原因が残る限り戻りは売られやすい
弱気を据え置き引き金は米中間選挙である。民主党が上下両院を制し、テキサス州知事選ではデータセンターの新規開発停止を掲げた候補が勝った(報道)。11/5の米半導体指数SOXの ▲12.25% を、東京は11/6に一度に織り込んだ。トヨタ・東京エレクトロン・ソニーGは業績見通しを引き上げており、業績が崩れた下げではない。弱気を据え置いた前週の見方は日本株市場分析|日経平均の週間プラスを回復と読まないで示した。
底打ちと読まない理由は3つある。規制は政策の話で、いつ解消するか読めない。信用取引の評価損益率は10/30時点の ▲12.54% で、11/6の急落分は来週の公表で悪化する見込みである。米国では12/9のFOMCでの利上げ観測が約70%ある(報道)。
今週の3つの変化
- 移動 11/5は資金がAIから非AIへ移っただけだった日経平均 ▲1.79% に対しTOPIXは +1.16%、値上がりは1,130銘柄。トヨタは決算で +16.68%。市場から資金は逃げていなかった。
- 全面安 11/6はその受け皿ごと売られたプライムの99%近くが下落し、守りの食品・電力ガス・医薬品も約6%下げた。逃げ場のない売りは、換金売りや追加の担保を求められた投げ売りの特徴である(推測・確信度:中)。
- 倍率 株価の下げより、株価の倍率の下げの方が大きい日経平均のPERは20.58倍から17.86倍へ ▲13.2%、株価は ▲9.25%。決算期で利益見通しが上がったためで、米国と同じく「利益は増え、倍率が縮む」形である。
先週の見立ての答え合わせ
- ○市場体温の弱気妥当。日経平均は週 ▲9.25%
- ×アドバンテスト 買い:週 ▲19.64%外れ。日経平均を10.4ポイント下回った
- ×TDK 中立(買い寄り):週 ▲18.08%外れ寄り
- ○東京エレクトロン 短期は中立:週 ▲13.15%妥当。決算で +5.16% と反応したが、週では保てなかった
- ○富士通 中立:週 ▲11.15%妥当。日経平均並み
買い寄りの判定がAI関連に偏り、規制への警戒で一斉に外れた。AI関連の個別株は、業績よりも米国の政策と需給で決まる局面に入った(確信度:中)。AI関連を銘柄ごとに選ぶ必要は日本株市場分析|AI関連はもう一括りに買えないで指摘していた。
体温を動かす条件
- ↓日経平均が11/6の日中安値 56,745円を終値で割る、または 55,242円(来期予想利益の18倍)を割る弱気をさらに深める
- ↓信用取引の評価損益率が ▲20% を超える投げ売りの最終局面か確認する
- ↑日経VIが35を下回って3日以上続く、日経平均が終値で60,000円を回復して週末まで保つ、またはソフトバンクGと米AMATの決算後も半導体株が11/6の安値を割らない中立(弱気寄り)へ戻す
主要指標
11/6 終値| 指標 | 終値 | 前日比 | 週間 |
|---|---|---|---|
| 日経平均 | 57,434.77 | ▲5.96% | ▲9.25% |
| TOPIX | 3,707.99 | ▲5.90% | ▲6.48% |
| グロース250 | 709.12 | ▲5.63% | ▲9.15% |
| 日経VI | 44.60 | — | +10.78pt |
| 日本10年債 | 2.635% | ▲13.5bp | ▲12bp |
| ドル円 | 157.90 | — | +0.20% |
| 日経平均PER | 17.86倍 | — | 20.58倍から |
| プライム売買代金 | 12.5兆円 | — | 前週末 8.5兆円 |
TOPIXは4週続けて下落した。11/6夜の米国はSOXが +4.21% と反発し、大阪の夜間取引の日経平均先物は 58,250円(+840円)で終えた。この反発は11/6の東証終値に入っていない。
上がったのは自動車・不動産・小売の3業種だけだった
週間騰落率TOPIX-17業種ETFの週間騰落(10/30比)。中央の縦線がゼロ。
週間でプラスの業種は前週の10から3へ減った。エネルギーは原油の週 ▲12.76%、鉄鋼・非鉄はAI向けの電線と銅の期待がはげた。食品の11/6 ▲10.75% は、ロシア子会社への大統領令でストップ安になったJT1社が主因で、食品全体の悪化ではない。
AIインフラ関連は2〜4割下げ、トヨタだけが上がった
週間騰落率主な銘柄の週間騰落(10/30比)。中央の縦線がゼロ。
半導体製造装置・電子部品・データセンター向け電線が軒並み2〜4割下げた。SCREENは決算の未達、村田製作所は11/5のストップ安が重なった。上がったのは決算で見通しを引き上げたトヨタと、通信の2銘柄だけである。買う理由が業績にある銘柄だけが残った(推測・確信度:中)。10月の急落を業種ごとに分解した回は日本株市場分析|日経平均の急落を全面安と読まないである。
日次の推移:11/5は「乗り換え」、11/6は「全面安」
今週の分析の核| 日付 | 日経平均 | 前日比 | TOPIX | 日経VI | 値上がり/値下がり | 売買代金 | 材料 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 10/30 | 63,290.11 | ▲2.12% | ▲0.95% | 33.82 | 807/714 | 8.5兆円 | 前週末 |
| 11/2 | 63,081.86 | ▲0.33% | ▲0.88% | 35.72 | 505/1,011 | 7.6兆円 | キオクシア ▲15.78%(決算)、東京エレク +5.16%(決算) |
| 11/4 | 62,188.63 | ▲1.42% | ▲0.89% | 24.98 | 425/1,084 | 10.8兆円 | 米中間選挙で民主党の優勢が判明 |
| 11/5 | 61,077.90 | ▲1.79% | +1.16% | 33.56 | 1,130/410 | 11.8兆円 | 非AIへの乗り換え。トヨタ +16.68%、村田製作所はストップ安 |
| 11/6 | 57,434.77 | ▲5.96% | ▲5.90% | 44.60 | 21/1,523 | 12.5兆円 | 全面安。米SOX ▲12.25% を一度に織り込む。JTもストップ安 |
通期の営業利益見通しを3兆4,000億円から3兆9,000億円へ引き上げた。想定為替を円高に見直したうえでの上方修正で、本業が良くなっている。自社株買いも1兆円から1.3兆円へ増やした。先週決めた買い条件が当てはまった。
- 目標株価
- コンセンサス 3,691円(+10.6%)/自己評価 3,300円 → 3,700円
- バリュエーション
- 会社予想EPS 296.86円の約12.5倍で評価
- カタリスト
- 自社株買いの実行・下期の再上方修正
- 最大リスク
- 円高・関税緩和への期待のはく落・全面安での換金売り
10〜12月期の営業利益見通しは前四半期並みの約2兆円で、市場予想を約13%下回った。見通しの未達は3四半期続く。予想PERは約2.6倍と極端に低いが、利益の山にいるサインとみて割安の根拠にはしない。
- 目標株価
- 自己評価 13,000円 → 9,500円(8,200〜11,400円)
- 直近決算
- 7〜9月期の営業利益 1兆9,947億円は予想を小幅に上回った
- カタリスト
- 米国の規制が限定的と判明・11/17 NVIDIA 決算
- 最大リスク
- データセンター規制・信用買いの投げ・NAND価格の頭打ち
保有するArmの株価は10/9から ▲34.4%、ソフトバンクGはそれを上回る ▲38.8% 下げた。先週の売り条件「Armが250ドル割れ」は当てはまったが、下げはすでに織り込まれたとみて売りにはしない。11/10の決算を待つ。
- 目標株価
- コンセンサス 8,250円/自己評価 3,300〜4,600円(中心3,900円)
- 直近決算
- 11/10 発表。9月末の保有資産の価値には10月以降のArm安が入らない
- カタリスト
- 借入の比率・自社株買い・OpenAIへの出資計画
- 最大リスク
- データセンター規制・Arm安による借入比率の上昇
割高感は1週間で大きく薄れた
バリュエーション株価は下がったが、決算で利益見通しは上がった。その結果、日経平均のPERは「割高」から「やや割高」の水準まで下がった。
- 来期予想との比較
- 来期(26年度)の予想利益の約18.7倍。前週は約20.6倍
- 予想利益の18倍
- 55,242円(ここを割れば弱気を深める)
- 予想利益の19倍
- 58,311円
- 予想利益の変化
- PERから逆算した1株利益は 3,075円 → 3,216円(+4.6%)
株価は割高感を急速に解消した。それでも買いに転じないのは、下げの原因が業績ではなく政策で、倍率がさらに縮む余地が残るからである(推測・確信度:中)。
次に確認すべきこと
日付順| 時期 | イベント | 注目点 |
|---|---|---|
| 11/9 | 東京の寄り付き | 夜間取引 58,250円と米SOXの反発の反映。56,745円を守れるか |
| 11/10 | ソフトバンクG 決算・米CPI・日銀「主な意見」 | 借入の比率と株主還元。CPIで12月の米利上げ観測がどう動くか |
| 11/12 | 米AMAT 決算 | 半導体製造装置の市場見通し。東京エレク・KOKUSAI・SCREENへの波及 |
| 11/13 | メガバンク 決算 | 銀行株の週 ▲6〜7% に見合う業績か |
| 11/17 | 米NVIDIA 決算 | AI・半導体の需要の確認 |
| 随時 | 信用取引の評価損益率 | 11/6の急落分の反映。▲20%超なら投げの最終局面か |