日本株市場分析 ― AI関連はもう一括りに買えない
AIの収益への疑いが強まった週に、同じAI関連でも明暗がはっきり分かれた。ソフトバンクグループは週 ▲8.03%、キオクシアは ▲9.30%、村田製作所は ▲5.87% と売られた一方、アドバンテストは +7.71%、SCREENは +6.98% と上げ、米SOX指数が1日で ▲3.39% 下げた翌日も逆行高だった。買われたのはAIの設備投資を受け取る側だけで、投資の出し手・メモリ・AIサーバー向け部品は売られた。日経平均は10/6に7万円台に乗せた後3日続落し、週 +1.06% で終えた。市場体温は中立に据え置く。
結論:AI関連の中で勝ち負けが分かれた
選別の始まり- 選別 買われたのは設備投資を受け取る側だけアドバンテスト +7.71%・SCREEN +6.98%・レーザーテック +5.27% と、テスタ・装置・検査が上げた。売られたのはAI投資の出し手(ソフトバンクグループ)、メモリ価格に左右される会社(キオクシア)、AIサーバーの出荷に連動する部品(村田製作所 ▲5.87%・イビデン ▲4.83%)だった。米国でも半導体の中でNVIDIAだけが相対的に強く、同じ選別が起きている(確信度:中〜高)。
- 伝わり方 良い数字でも株価が上がらない米国の7〜9月期決算は84%の企業が予想を上回ったが、上回った企業の株価の反応は平均 0.0%(5年平均 +0.9%)。日本でもTSMCの9月売上(前年比 +54.6%、前月比 ▲0.6%)やSamsungの最高益見通しが「期待に届かない」と受け止められた。市場は数字の良さより、AI投資が回収できるかを見始めた(確信度:中)。
- 兆し 守りの業種が週間首位に立った業種別ETFでは食品が +3.19% で首位、素材・化学が +2.83% で続き、銀行(▲3.06%)と鉄鋼・非鉄(▲2.96%)が下位だった。景気の減速を先回りする動きの兆しとして初めて記録したが、1週分なので判断は変えない。米国でも公共・生活必需品が上位に来ている(確信度:低〜中)。
弱気に下げない3つの理由
- 1上がった銘柄が大幅に増えた10/9は値上がり 1,194/値下がり 331。前週10/2の 215/1,306 から中身は改善した
- 2株の上乗せ利回りの縮小が5週目で止まった日本10年債が 3.09% → 3.01% に下がり、約 1.36pt へわずかに戻した
- 3装置・検査には業績の裏付けがある米国の半導体の7〜9月期増益率は約 +130%。アドバンテストは通期の営業益を 8,460億円 へ上方修正済み
それでも「強気寄り」に上げない3つの理由
- 1日経VIが30台に乗った先物主導で指数が大きく振れやすい状態。7万円台を付けた直後に3日続落した
- 2信用倍率が 6.17 → 8.69倍 に悪化売り残が 1兆472億円 → 7,507億円 に急減した。空売りの買い戻しによる押し上げは一巡した
- 3日経平均のPERは約22.5倍2026年度の予想利益を目安の上限より先取りした楽観水準のまま(確信度:中)
主要指標
10/9 終値| 指標 | 10/9 | 週間 |
|---|---|---|
| 日経225 | 69,030.92 ▲0.02% | +1.06% 4週連続高 |
| TOPIX | 4,104.81 | +0.34% |
| NT倍率 | 16.82 | 16.70から 日経優位 |
| グロース250 | 806.62 | +1.05% 800回復 |
| 日経VI | 30.14 | 22.58から 10/7 32.73 |
| 日本10年債 | 3.010% | 3.09%から 低下 |
| 米10年債 | 5.24% | 週中に 2002年以来の高水準 |
| ドル円 | 158.31円 | 円安 |
| プライム 売買代金 | 7兆8,454 億円 | — |
| 値上がり /値下がり | 1,194/331 | 10/2は 215/1,306 |
| 信用倍率 | 8.69倍 | 6.17から 悪化 |
日本10年債の低下は銀行株には逆風で、銀行の業種別ETFは週 ▲3.06% と下位だった。
受け取る側は上がり、出し手・メモリ・部品は下げた
週間騰落率AI・半導体関連の主な銘柄の週間騰落(10/2比)。
前週はそろって上げた半導体関連が、今週は真っ二つに割れた。同じ週の日経平均は +1.06%。売られた側はAIの収益が想定に届かなければ直接響く会社で、上げた側はAI向けの設備投資そのものを受注する会社だった(確信度:中〜高)。前週の半導体の一斉高は日本株市場分析|上げたのは半導体だけで割高感が増したで取り上げた。
株の上乗せ利回りの縮小は5週目で止まった
益回り − 日本10年債日経平均の益回り(PERの逆数)から日本10年債利回りを引いた差。株を持つ見返りが国債をどれだけ上回るかを示す。
止まったのは株が割安になったからではなく、日本10年債の利回りが下がったから。日経平均のPERは約22.5倍のままで、目安の上限を上回っている。米国ではこの差が ▲0.01pt と2週続けてマイナスで、日本の余裕は金利の動き次第で消えやすい(確信度:中)。米国で差がマイナスに転じた経緯は米国株市場分析|業績は最強でも株は利回りで国債に負けたにまとめている。
需要の見方は変えていない。株価が目標に近づいたための引き下げ。前回決めた「上値余地が5%を切ったら中立」に当てはまった。
- 目標株価
- 自己評価 43,000円(据え置き)/コンセンサス 43,413円。上値余地 +3.3%
- バリュエーション
- PER(会社予想)45.67倍(3カ月の範囲 35〜46倍の上限付近)・PBR 28.89倍・時価総額 約30.5兆円
- 直近決算
- Q1 売上 3,675億円(+39.3%)・営業益 1,900億円(利益率 51.7%)。通期営業益を 8,460億円 へ上方修正済み
- 再び買う条件
- 10/28のQ2決算での再上方修正、または 38,000円 付近への押し目
- カタリスト
- 10/28 Q2決算・TSMCのQ3設備投資計画・HBM向けテスタの需要
- 最大リスク
- 決算前の期待先行で、上振れでも株価が反応しないおそれ(確率 中)
OpenAIの売上が報道より小さいとの報道を一身に受けた。10/9だけで日経平均を約243円押し下げた。
- 目標株価
- 自己評価 5,000〜7,000円(5,400〜7,400円から引き下げ)
- バリュエーション
- 保有資産の価値(NAV)で見る持株会社。1株NAV 約 10,207円 に対し見かけは約43%の割安。ただしArm ▲14.2%・Intel ▲14.9%(9/25比)でNAV自体が縮み、実際の割安幅は浅い
- 直近決算
- Q1 純利益 3,473億円(▲17.7%)。Q2(11月上旬)で9月末のNAVを開示
- 局面の変化
- 9月は「NAVとの差の拡大」、10月は「NAVそのものの縮小」へ
- カタリスト
- Q2のNAV開示・OpenAIの資金調達と評価額・Arm決算
- 最大リスク
- OpenAI評価額の切り下げ・Armの続落。AIへの疑いに最も敏感な銘柄
好決算と上方修正でも、株価は7/6比 ▲16.9%。製品価格の下落を、工場の稼働率の上昇と円安で補った構図が嫌われている。
- 目標株価
- 自己評価 9,000円(旧 12,000〜14,000円 から引き下げ)/コンセンサス 9,358円。上値余地 +12.9%
- バリュエーション
- PER(会社予想)42.91倍・PBR 5.26倍・時価総額 約15.7兆円
- 直近決算
- Q1 売上 5,023億円(+20.7%)・営業益 985億円(+59.8%)。通期営業益を 3,800億円 → 4,300億円 へ上方修正
- カタリスト
- 10/30 Q2決算・円安 158円台(会社想定 155円)・AIサーバーの出荷
- 最大リスク
- AI関連部品株の売りの継続・TDKと太陽誘電の提携による競争・製品価格の下落
米国のAIへの疑いは日本の出し手を直撃した
今週のトピック米国発の材料と、日本株への伝わり方。
- OpenAIの売上報道
- 10/8に英FTが報道し、米国のAI株が急落。日本ではOpenAIに出資するソフトバンクグループに売りが集中した。OpenAIの収益構造はOpenAI IPO徹底解説|赤字構造とMicrosoft依存リスクで解説している
- TSMC・Samsung
- TSMCの9月売上は前年比 +54.6% でも前月比 ▲0.6%。Samsungは最高益の見通しでも期待に届かなかった
- 装置・検査の耐性
- 米国のIT企業の7〜9月期増益率は +65.1%(半導体は約 +130%)。設備投資が続く裏付けがあり、売られなかった
- 米国の金利
- 米10年債は週中に2002年以来の高水準を付け、10/9は 5.24%。年内の追加利上げ観測が強い
AIの「投資を出す側」と「収益を上げる側」への疑いが、日本では出し手と部品に集中した。設備投資を受注する側が売られ始めたら、AI関連全体への疑いに広がったと判断する(確信度:中)。
次に確認すべきこと
日付順| 時期 | イベント | 注目点 |
|---|---|---|
| 10/13 | 米大手銀行決算 | JPモルガンなど。米国景気と金利の見方 |
| 10/14 | 米9月CPI | 米10年債 5.3% 台への再上昇があるか |
| 10/16 | 植田日銀総裁の挨拶(代読) | 利上げ継続の示唆。日本10年債 3% の攻防 |
| 10月中旬 | TSMC Q3決算 | 設備投資計画。装置・検査の耐性が続くかを左右する |
| 10/28 | アドバンテスト Q2 | 通期の再上方修正。上振れで株価が反応するか |
| 10/30 | SCREEN・村田・キオクシア Q2 | 部品の製品価格、キオクシアの自社株買い期限 |
| 11月上旬 | ソフトバンクG Q2・Arm決算 | 9月末のNAVとOpenAIの評価額 |
| 随時 | 日経VI 30超の継続 | 食品・医薬品が上位を続けるか(守りへの移行のサイン) |