日経平均の上昇を強気の根拠にできない理由|上げ幅86%は3銘柄

日本株市場分析 / at a glance Layer 1 → 3 の3層構造 基準日 2026-09-20

日本株市場分析 ― 日経平均の上昇を強気の根拠にできない

日経平均は週 +1.57% 上昇したが、9/18は値上がり511銘柄に対し値下がり1,003銘柄で、上げ幅の86%を上位3銘柄が作った。指数は上がっても大半の銘柄は上がっておらず、この偏りは前週から変わっていない。市場体温は中立へ半歩引き上げたが、強気には転じない。

市場体温
中立
前回9/13の「中立(弱気寄り)」から半歩引き上げ。バリュエーションはやや割高
日銀政策金利(9/18)
1.25%
0.25%引き上げ・賛成7 反対2。1995年以来・約31年ぶりの高水準
日本10年債
2.985%
政策金利は+25bpなのに+0.5bpしか動かず。10年-2年差は114.5→113.0bpへフラット化
ドル円
156.85
利上げしたのに週 +2.15% の円安。今週最大のねじれ

結論:動かしたのは金融政策の中身ではなく「通過」そのもの

上げたのは一部だけ
  1. 通過 日米の中央銀行が同じ週に利上げしたのに、日経平均は週 +1.57% 上昇した9/18は 65,018.95円(+882.70円・+1.38%)で3日続伸し、9/10以来の65,000円台を回復。日経VI(恐怖指数)は 29.80 → 24.23(▲18.7%)へ急低下。株価を動かしたのは政策の中身ではなく2大イベントの通過そのものである(確信度:高)。
  2. 新リスク 週の入口に、金利とは別種のショックが来た9/14にAnthropicのDario Amodei氏が「AI開発のペースを落とすべき」と表明し、Altman氏・Musk氏・Microsoftが同調。さらにOpenAIの年内IPO見送りが報じられ、SBGは ▲10.72%(一時▲13%)、キオクシアは ▲6.37%。金利でもドル円でもない「AI設備投資テーマそのものへの疑義」という新しいリスクである(確信度:高)。
  3. 逆転 前回「③逆金融相場の教科書どおり」としたエネルギー一人勝ちが1週間で崩れた今週のTOPIX-17は医薬品 +4.60% が首位、銀行 ▲0.70% が最下位、エネルギー資源 ▲0.40% が下から2番目。原油の$100割れと、日銀が利上げしても10年債が動かずイールドカーブがフラット化したことが、それぞれエネルギーと銀行の足を払った(確信度:中〜高)。

体温を半歩引き上げた4つの理由

  • 19月最大の2大イベントを両方通過した日経VIは ▲18.7%。前回「結果を見るまで体温は動かさない」と保留した条件が解消
  • 2グロース250が週 +5.35% で主要指数最強前回は ▲3.63% で最弱。リスクオンの先行指標が金利上昇のなかで反転(確信度:中)
  • 3セクターの広がりが戻ったTOPIX-17のうち14業種が上昇(前回は4業種)。「エネルギーだけが上がる」逃げ場なしの状態は解消
  • 4利上げしたのに円安という予想外の組み合わせ輸出株の採算改善という形で下支えに回った

それでも「強気寄り」に上げない5つの理由

  • 1値上がり銘柄の少なさが前回と全く同じ9/18は日経 +1.38% でも値上がり511/値下がり1,003、TOPIXは反落。上位3銘柄で上げ幅の86%(+762円/882.70円)(確信度:高)
  • 2信用の過熱が進んだ信用倍率 7.66 → 8.35倍、信用評価損益率 ▲5.34% → ▲6.50%株価が上がったのに個人の含み損が拡大したのは、個人の買いが上がらなかった銘柄に偏っている証拠
  • 3現物の実需の買い手が乏しい海外投資家は現物で3,036億円の売り越し(2週ぶり)、信託銀行は5週連続売り越し。買い越しは個人と海外の先物のみ
  • 4益回りスプレッドが縮んだ指数ベース益回り4.63% − 10年債2.985% = 1.645pt(前週1.73pt)。株価が上がった分だけ株式の相対的な魅力が落ちた(確信度:高)
  • 5AI開発減速表明という新しい構造的リスク金利・原油のように数値で追えず、織り込みの度合いも測れない(確信度:中)

主要指標

9/18 終値
指標9/18週間
日経22565,018.95
+1.38%
+1.57%
3日続伸
TOPIX4,091.14
▲0.07%
+1.56%
3日ぶり反落
グロース250808.98
+2.49%
+5.35%
主要指数で最強
日経VI24.23▲5.57
29.80から
ドル円156.85円+2.15%
円安
日本10年債2.985%+0.5bp
10年-2年差113.0bp114.5から
フラット化
プライム
売買代金
10兆3,969
億円
約1カ月ぶり
の大商い
値上がり
/値下がり
511/1,0039/11は
509/986
信用倍率
9/11時点
8.35倍7.66から
悪化
信用評価
損益率
▲6.50%▲5.34から
悪化
日経PER
指数ベース
21.60倍
加重平均17.19倍
PBR 2.68倍

海外投資家は現物 3,036億円の売り越し(先物は5,660億円の買い越し)、個人は4,491億円の買い越し(3週ぶり)、信託銀行は5,506億円の売り越し(5週連続)。
指数は26年度の予想EPS 3,069円を約21.2倍で先取りしている(前回20.86倍)。

AI減速表明は「量に賭ける銘柄」を選んで殴った

9/14 の下落率

AI開発減速表明とOpenAI年内IPO見送り報道が出た9/14の下落率。

9/18の戻しと週間

銘柄9/149/18週間
キオクシア▲6.37%+9.40%+1.00%
アドバンテスト▲2.02%+5.99%+1.04%
東京エレクトロン▲1.03%+4.20%+3.21%
レーザーテック▲0.26%+8.70%+13.07%
SBG▲10.72%+1.09%▲3.44%

前回「米国の半導体高はメモリにしか伝わらない」としていた仮説は、2週続けて成り立たなかったため撤回されている。7月の急落からの立ち上がりは半導体はなぜ7月に急落したかで整理している。

医薬品が首位、銀行が最下位

TOPIX-17 ETF 週間騰落

17業種のうち14業種が上昇(前回は4業種)。中央の縦線がゼロ。

9/18の日経 +1.38% は、2業種による指数の押し上げだった

東証33業種・上昇は7業種だけ

上昇した7業種

非鉄金属+2.29%電気機器+1.98%
金属製品+0.64%ガラス土石+0.60%
機械+0.37%医薬品+0.07%
証券+0.02%

下落上位

電気・ガス業▲2.24%石油石炭▲1.88%
水産農林▲1.77%海運▲1.72%
不動産▲1.47%倉庫運輸▲1.41%
保険▲1.14%銀行▲0.54%

日経平均の上げ幅882.70円のうち、アドバンテスト +436.86円・東京エレクトロン +215.21円の2銘柄で約652円(74%)を作った。市場全体が上がった日ではない(確信度:高)。日銀利上げ当日に銀行・保険がともに下落した点も、この週の性格を表している。

6920レーザーテック 39,090円
中立 → 買い 確信度 中 週 +13.07%

代表銘柄40社超で最強。日経を +11.50pt アウトパフォームした。引き上げの決め手は受注の急回復と、最悪の日に無傷だったこと。

目標株価
自己評価 38,000〜46,000円(初回設定)/コンセンサス 48,693円(+24.6%)
バリュエーション
PER 38.93倍(12カ月後予想32.3倍)・PBR 14.19倍。年初来高値から ▲33.3%
業績サイクル
底打ち確認期 → 拡大期への移行
受注高
26/6期 2,375億円(前期比 +125.7%)。27/6期計画は3,000〜4,000億円
27/6期計画
売上 +25.8%・営業益 +18.8%・純益 +16.2%(2年ぶり最高益)
カタリスト
証券3社の目標株価引き上げが4営業日に集中(9/17に野村が38,700→41,800円。理由はDRAM投資増とEUV導入レイヤー数の増加)
最大リスク
目標株価引き上げの集中が短期の上値を先食いした可能性(確信度:中)。AI減速議論が設備投資の総額削減に及べばDRAM投資増の前提が崩れる

26/6期は減収減益(売上 ▲8.3%・営業益 ▲14.3%)だが、これは受注の谷の反映。シクリカル株では受注回復が売上・利益に現れるのは1〜2四半期遅れるため、「減収減益だから弱い」と読むのは誤り。

6857アドバンテスト 32,050円
中立 据え置き 5週連続・確信度 中 週 +1.04%

9/18の日経の上げ幅の50%(+436.86円)を1銘柄で作りながら、週間では日経に負けた。4週連続のアンダーパフォーム。

目標株価
自己評価 30,000〜36,000円(小幅上方シフト)/コンセンサス 42,187円(+31.6%)
バリュエーション
PER 35.18倍(12カ月後予想31.1倍)・PBR 22.25倍・時価総額 23.46兆円
直近決算
27/3期Q1 売上 3,675億円(+39.3%)・営業益 1,900億円(+53.3%・利益率51.7%)。通期を6,275億→8,460億円へ上方修正
最重要論点
9/17はFOMCを無難に通過し日経+0.33%・値上がり8割超の日に ▲1.50%。「イベント通過の安心感」ではこの銘柄は買われない(確信度:中〜高)
資金の流れ
同じ半導体内で「テスタ」から「検査・前工程装置」へ移った。前回リスクの「キオクシアへの資金流出」は流出先が変わって継続(確信度:中)
買いに上げる条件
①10月下旬のQ2決算で上方修正が出て株価も素直に反応 ②週間で日経を上回る週が2週続く

業績は最良で「売り」の根拠はない。金利面も改善した(政策金利+25bpでも10年債は+0.5bp)。それでも追い風(円安)と向かい風(物色軸の移動・米10年債5%台)が相殺しており、「買い」に上げる根拠が足りない。

9984ソフトバンクグループ 6,315円
中立 据え置き 確信度 中 週 ▲3.44%

上場資産と為替がすべて有利に動いたのに株価は下落した。値下げされたのは未上場のOpenAI持分の評価である(確信度:中)。

項目9/119/18変化
Arm264.79275.61+4.09%
Intel102.94108.60+5.50%
ドル円153.55156.85+2.15%
円換算増
SBG株価6,5406,315▲3.44%
NAVディスカウント
Q1プロフォーマ基準(NAV/株 約10,207円)で 約38%。前回9/13は約36%で拡大
9/14の下落
▲10.72%(一時▲13%・2025年8月以来の安値)。OpenAI年内IPO見送り報道+AI開発減速表明への同調
質的な変化
これまでの下落材料はすべて「資産の値段」の問題だった。今回初めて「資産に将来価値があるという前提」そのものが問われた(確信度:中〜高)
目標株価
自己評価 5,400〜7,400円/コンセンサス 8,649円(+37.0%)
最大リスク
OpenAIのIPOという最大のカタリストが年内から外れた。ディスカウントが縮む契機が見えなくなり長期化する可能性(確信度:中〜高)
次の確認点
10月のOpenAI第3トランシェ100億ドルが予定どおり実行されるか。11月上旬Q2決算での9月末NAV開示

米国要因の波及 ― 5つの経路

米国側の分析との突き合わせ
経路米国で起きたこと日本での現れ方確信度
①日米同時利上げ FOMC 9/16に3年ぶり利上げ。米10年債は9/14に5%突破 日本10年債は+0.5bpしか動かず、10年-2年差は113.0bpへフラット化。日本の利上げはすでに織り込み済みで債券市場を動かさなかった。結果、日米そろって「利上げ局面なのに金融が弱い」(米 ▲2.43%・日本 ▲0.70%) 中〜高
②エネルギー 原油が$100を割り、XLE ▲1.27%で前週の首位から転落 エネルギー資源ETF ▲0.40% で下向きにも日米一致。FactSetのQ3増益率でエネルギーは +109.6% と最強のままだが、株価は業績ではなく足元の原油に反応した
③AI半導体の物色分散 NVIDIAが中立へ引き下げ。AMD +8.46%、メモリ(SanDisk・Seagate・Micron)が強い 日本ではメモリ(キオクシア +1.00%)ではなく装置・検査(レーザーテック +13.07%・KOKUSAI +8.85%)が強かった。「DRAM投資が増えるなら検査装置が売れる」という一歩先の連想に置き換わった
④円安 日米金利差が縮まらず、ドル円は156.85円へ 円安は「輸出株全般」ではなく「半導体だけ」に効いた。自動車は上がらなかった(トヨタ ▲0.20%・デンソー ▲0.31%)
⑤AI開発減速表明 FactSetの「ITの +63.3% は半導体を除くと +24.2%」が示す偏在構造 「量に賭ける銘柄」を選んで直撃した。SBG ▲10.72%・キオクシア ▲6.37% に対し、東エレク ▲1.03%・レーザーテック ▲0.26%。AI設備投資の量が疑われた瞬間に指数の増益率の前提が崩れる構造は日米共通で、今後の最大の監視対象。業績と株価が噛み合わない局面は半導体デカップリング 業績最強でも日本株が売られる理由でも扱った 中〜高

前回の「確認すべきこと」の検証

9/13 → 9/20
前回の項目結果
米SOXの反発が半導体の買い戻しにつながるかつながらなかった。AI開発減速表明という別の材料が優先し日経 ▲0.81%
米FOMC(利上げ確率85〜90%)予想どおり0.25%利上げ(12対0)
日銀会合(1.25%・織り込み約80%)1.25%へ利上げ(7対2)。ただし反対2票で円は157円台へ一段安
日本10年債が3%で定着するか定着しなかった(2.985%)
WTIが$100を維持するか維持できなかった。エネルギー一人勝ちは終了
益回りとの差(1.73pt)が縮むか縮んだ(1.645pt)
キオクシアとアドバンテストの相対ほぼ互角(+1.00% vs +1.04%)。むしろ装置・検査が強く仮説は撤回

次に確認すべきこと

来週は3営業日のみ
時期イベント注目点
9/21・9/23休場
敬老の日・秋分の日
来週は3営業日のみ。米国の動きが溜まって週後半に一気に出やすい
9/24〜259月末の配当権利取り高配当株への資金流入と権利落ち後の反動
9/30キオクシアの株式分割
1株→3株・基準日
権利付最終売買日の正確な日付は情報源が食い違い未確定(確信度:低)
9月末日経平均の定期入れ替え
10/1適用
採用はJX金属・KOKUSAI・カプコン。KOKUSAIは今週+8.85%で、指数買い需要がどこまで先食いされたか
10月上旬SBGのOpenAI第3トランシェ
100億ドル
年内IPO見送り後もスケジュールどおり実行されるか
10月下旬アドバンテスト・東エレク・ディスコのQ2決算装置株への資金シフトが業績で裏づけられるか
随時AI開発減速の議論9/14は3営業日で株価的に埋めたが、テーマの前提への問いは残る。今後の最大の監視対象
随時10年-2年差(113.0bp)カーブが立てば銀行株の買い直し。フラット化継続なら金融は買えない
随時信用倍率8.35倍・評価損益率▲6.50%個人の含み損拡大は戻り売り圧力になる
随時海外投資家の現物9月第2週は3,036億円の売り越し。信託銀行は5週連続売り越し

出所:Yahoo Finance Japan・Yahoo Finance チャートAPI(指数・個別銘柄・TOPIX-17 ETF)/日本銀行 金融政策決定会合(9/17〜18)・植田総裁会見/nikkei225jp.com(バリュエーション指標)/東証 適時開示情報閲覧サービス/IFIS株予報(アナリストコンセンサス)/日本金融経済研究所(理論株価参照表)/FactSet Earnings Insight 2026-09-18 号・米国株市場分析 2026-09-20(米国側の前提)。株価と騰落率は 2026-09-18 東京市場終値。

本ページは投資判断の材料であり、投資勧誘ではありません。判定と目標株価には推定が含まれ、確信度を併記しています。

JPX(東京証券取引所)外観|日本株・日本市場

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