SpaceX(スペースX)が2026年6月12日に上場し、初値が公募価格を大きく上回ったことで「超大型IPO(新規株式公開)」という言葉が再び注目を集めています。こうした巨大IPOは過去にも何度かありました。今回は、史上最大級だったサウジアラムコ(2019年)とアリババ(2014年)を中心に、大型IPOの歴史から投資初心者が学べる3つの教訓を整理します。
結論から言うと、大型IPOは「話題の大きさ」と「その後の株価」が必ずしも一致しません。歴史を知っておくと、目の前の熱気に飲まれずに判断できるようになります。
大型IPOとは何か、なぜ歴史を学ぶのか
IPO(Initial Public Offering:企業が初めて株式を証券取引所に上場し、誰でも売買できるようにすること)のうち、調達額が極めて大きいものを「超大型IPO」と呼びます。SpaceXの上場をきっかけに「大型IPO」というテーマへの関心が一気に高まりました。
大型IPOの歴史を学ぶ意味は、はっきりしています。上場直後は注目度が高く、株価が大きく動きやすい一方で、その後の値動きは銘柄ごとにまったく違うからです。過去の事例を知っておけば、初値の高さだけで「成功したIPO」と判断する誤りを避けられます。
主役2社:アラムコとアリババの「その後」
まずは史上最大級の2社が、公募価格から初値、そしてその後どう動いたのかを見てみましょう。
サウジアラムコ(2019年):初日急騰、その後は公募割れも経験
サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは、2019年12月に公募価格32サウジリヤル(約8.53ドル)で上場し、約256億ドルを調達しました。これはアリババの記録を抜いて当時史上最大のIPOです。
上場初日の株価は値幅制限いっぱいの10%高となり、時価総額は一時1.88兆ドルに達しました。ところが約3か月後の2020年3月、原油価格の急落と新型コロナの影響で、株価は初めて公募価格の32リヤルを下回りました。一時は22.32リヤルまで下落しています。世界最大の会社でも、上場後すぐに公募割れ(株価が公募価格を下回ること)が起こり得るという典型例です。
アリババ(2014年):初日38%高、1年後には公募価格割れ
中国のネット通販大手アリババは、2014年9月に公募価格68ドルで上場しました。初日の終値は93.89ドルと、公募価格を約38%上回る派手なスタートを切り、当時としては史上最大級のIPOとなりました。
しかしその後の株価は厳しいものでした。上場直後に一時120ドル近くまで上昇したあと下落に転じ、約1年後の2015年9月には57ドル台まで下げています。これは公募価格の68ドルすら下回る水準です。初日に飛びついた投資家の多くが、1年後には含み損を抱えていた計算になります。
脇役4社が補強する「初値のばらつき」
主役2社だけでなく、ほかの有名な大型IPOも見ておくと、初値とその後の関係がさらにはっきりします。
- フェイスブック(2012年):公募価格38ドルに対し初日終値は38.23ドルとほぼ横ばい。話題性のわりに初値は伸びず、公募価格を安定して上回るまで1年以上かかりました。
- ウーバー(2019年):公募価格45ドルに対し初日終値は41.57ドルと、公募割れでの船出。期待された大型IPOが初日からマイナスになる例です。
- コインベース(2021年):参照価格250ドルに対し初日終値は328.28ドル。一時429ドルまで急騰したあと急落するなど、値動きが非常に荒い展開でした。
- リビアン(2021年):公募価格78ドルに対し初日終値は約100ドルと派手に上昇。しかしその後株価は約9割下落しました。
このように、大型IPOの初値は「大きく上がる」「ほぼ横ばい」「公募割れ」のすべてが起こります。そして初日の派手さと、その後1年の成績はまったく別物だとわかります。
SpaceXと過去事例を重ねてみる
今回のSpaceXは、公募価格135ドルに対し初値150ドル、初日終値160.95ドル(約19%高)という、アリババ型の「派手なスタート」に近い動きでした。これは投資家の期待が強いことを示す一方、過去の事例を踏まえると、初日の上昇率がその後の値動きを保証するわけではありません。
アリババもリビアンも初日は大きく上昇しましたが、その後の道のりは大きく分かれました。SpaceXがどちらに近づくのかは、これからの業績と市場環境次第です。初値だけを見て判断しないという姿勢が、過去の歴史からの最大の学びになります。
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個人投資家が学ぶべき3つの教訓
ここまでの事例から、投資初心者が押さえておきたい教訓を3つにまとめます。
教訓1:初日の値動きは「人気投票」であって「実力評価」ではない
初値が公募価格を大きく上回っても、それは上場時点の人気の強さを示すだけです。アリババやリビアンのように、初日の熱狂が長続きしない例は少なくありません。
教訓2:世界最大の企業でも公募割れは起こる
サウジアラムコは世界最大級の企業ですが、上場から数か月で公募価格を割り込みました。企業の規模や知名度は、株価が下がらない理由にはなりません。
教訓3:判断は1年単位など時間軸を長めに取る
初日や数日の値動きより、半年・1年といった時間軸で業績や市場環境を見るほうが、IPO投資の教訓としては役立ちます。短期の上下に一喜一憂しないことが大切です。
大型IPOの歴史は、こうした普遍的な教訓を私たちに残してくれています。なお、IPO直後の「初値」がなぜ投資家の判断を惑わせるのかについては、参照点効果という考え方が参考になります。
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リーマン先輩からひと言
私自身、過去に話題のIPO銘柄を初日に追いかけて、痛い思いをしたことが何度かあります。今振り返ると、初値の高さを「成功の証拠」だと勘違いしていたのだと思います。大型IPOの歴史を並べてみると、初日に派手だった銘柄ほど、その後の落差が大きいケースが目立ちます。だからこそ私は、話題のIPOほど一歩引いて、1年後の自分が納得できるかを基準に考えるようにしています。歴史が残してくれた教訓は、こういう冷静さを取り戻すための道具だと感じています。
用語集
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| IPO | 企業が初めて株式を証券取引所に上場し、誰でも売買できるようにすること |
| 公募価格 | 上場前に決められる、最初に株を買える価格のこと |
| 初値 | 上場日に市場で最初についた株価のこと |
| 公募割れ | 株価が公募価格を下回ること。買った人が含み損になる状態 |
| 時価総額 | 株価×発行株式数で計算する、企業全体の市場価値 |
| 参照点効果 | 初値などの特定の数字を基準にしてしまい、判断が引きずられる心理的なクセ |
本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
