米国株市場分析 ― 利益が伸びても株価は下がる局面に入った
S&P500のQ3増益率は +31.4% と前週からさらに加速したが、指数は週 ▲2.68%、半導体指数SOXは ▲12.15% と大きく下げた。下がったのは利益ではなく株価の倍率で、先行PERは 17.7倍と2023年11月以来の低さになった。増益率の高い業種ほど売られており、業績の強さが株価を支えていない。前週に決めた引き下げ条件のうち2つが成立したため、市場体温を弱気へ引き下げる。
結論:売られたのは業績ではなく、AIに払ってきた高い倍率である
弱気へ引き下げ11/5はS&P500が ▲4.36%、SOXが ▲12.25% と急落した。AMDは決算が予想を上回ったのに同日 ▲17.3%(報道)だった。売りのきっかけは業績ではなく、中間選挙で民主党が上下両院を制したことによるAIデータセンター規制への警戒と、AI主力株の利益確定である(報道)。半導体の急落が始まった前週の見方は米国株市場分析|半導体の急落を相場全体の崩れと読まないで示した。
利益が増えているのに株価の倍率が縮むのは、金利が高止まりする局面で起きやすい。10月の雇用は +16.5万人と予想の約3倍で、12/9のFOMCでの利上げ観測を強める。11/6のSOX +4.21% の反発は、底打ちとは判断しない(確信度:中)。
今週の3つの変化
- 倍率 先行PERが1週で18.7倍から17.7倍へ下がった9/30以降、株価は ▲3.9%、12か月先の予想利益は +3.1%。ITの先行PERは17.3倍で、25年平均の20.0倍を下回り2020年3月以来の低さになった。
- 逆転 増益率の高い業種ほど売られた増益率1位のエネルギー(+149.4%)は週 ▲12.00%、2位のIT(+69.2%)は ▲8.23%。逆に先週最も売られた通信は +4.89% で首位に戻った。エネルギーは原油の週 ▲12.76% に加え、2027年の減益予想を株価が先に織り込み始めた(推測・確信度:中)。
- 決算 上回った幅の縮小は止まったが、株価の反応は鈍いEPSが予想を上回った企業は84%、上回った幅は +2.7%(前週 +1.9%)。それでも上回った企業の株価は発表前後で平均 +0.8% と5年平均の +0.9% に届かない。
先週の見立ての答え合わせ
- ○SOXの終値10,259割れ・VIXの終値25超を弱気へ下げる条件とした2つとも成立した(SOX 9,390.25・VIX 25.64)。規定どおり弱気へ引き下げた
- ○Amazon 買い:週 +7.88%当たり。S&P500を10.56ポイント上回った
- ○AMD 中立:週 ▲11.05%妥当。決算前に買いへ上げなかった判断は結果的に正しかった
- △NVIDIA 買い:週 ▲8.80%下落したので外れ。ただしSOX(▲12.15%)は3.35ポイント上回った
- ×Teradyne 中立(強気寄り):週 ▲20.47%外れ
体温を動かす条件
- ↓S&P500の終値が 7,060(高値から ▲10%)を割る、またはSOXが11/5の安値 9,011 を割る弱気をさらに深める
- ↓12/9のFOMCで利上げに加え、追加の利上げを示唆する弱気をさらに深める
- ↑SOXが終値で 10,259 を回復して1週間保つ、VIXが20を下回る、またはNVIDIAの決算に株価が上昇で反応する中立(弱気寄り)へ戻す
主要指標
11/6 終値| 指標 | 終値 | 前日比 | 週間 |
|---|---|---|---|
| S&P500 | 7,376.86 | +0.31% | ▲2.68% |
| Nasdaq100 | 26,989.99 | +1.35% | ▲4.91% |
| SOX 半導体 | 9,390.25 | +4.21% | ▲12.15% |
| VIX | 25.64 | ▲9.01% | +32.03% |
| 米10年債 | 4.86% | +2bp | ▲7bp |
| ドル円 | 157.50 | ▲0.54% | ▲0.19% |
| Gold先物 | $4,074.90 | ▲0.94% | +4.51% |
| WTI原油 | $90.83 | +0.34% | ▲12.76% |
S&P500の11/5の ▲4.36% は2025年4月以来の大きな下げで、Nasdaq100は高値から ▲13.94% と調整局面に入った(報道)。株安の中で金は週 +4.51% と買われた。原油は中東の停戦期待で $104 台から $90 台へ下がった(報道)。
半導体とエネルギーが売られ、通信が買い戻された
週間騰落率セクターETFと半導体指数の週間騰落(10/30比)。中央の縦線がゼロ。
S&P500は週 ▲2.68%。先週最下位だった通信が首位に、先週まで上位にいたエネルギーが最下位に入れ替わった。守りの業種(生活必需品・ヘルスケア・公共)は横ばいで、資金の逃げ先にもなっていない(推測・確信度:中)。
予想利益は伸び続け、株価だけが置き去りになった
S&P500株価と12か月先の予想利益(先行EPS)の変化率。「利益」は先行EPSを指す。中央の縦線がゼロ。
先行PERと増益率の推移(FactSet 各号)
| 号 | Q3増益率 | 先行PER | 上回った幅 |
|---|---|---|---|
| 10/9 | +29.6% | 19.1倍 | +4.9% |
| 10/16 | +29.0% | 19.0倍 | +2.6% |
| 10/23 | +29.5% | 18.7倍 | +2.1% |
| 10/30 | +30.2% | 18.7倍 | +1.9% |
| 11/6 | +31.4% | 17.7倍 | +2.7% |
先行PERは年初の22.0倍から17.7倍まで下がった。年初来の低下は予想利益の伸びによるもので、株価の下落によるものではない。ただし9月末以降は株価そのものが下がり始めており、倍率の縮小が予想利益の伸びを上回った。業績が強くても株が国債の利回りに負ける構図は米国株市場分析|業績は最強でも株は利回りで国債に負けたで取り上げた。
業績予想と株価:増益率の上位ほど売られている
今週の分析の核| セクター | Q3増益率 | 内訳を開けると | 今週の株価 | 整合 |
|---|---|---|---|---|
| エネルギー | +149.4% 前週 +146.4% | 原油のQ3平均は前年比 +32%。石油精製・販売は +542% | ▲12.00% | 増益率1位で下落も最大 |
| IT | +69.2% 前週 +67.5% | 半導体(+133%)を除くと +29.6%。AppleとSuper Microが上振れ | ▲8.23% SOX ▲12.15% | 増益率2位で下落も2番目 |
| 素材 | +29.7% | 金属・鉱業 +56% | ▲1.50% | — |
| 工業 | +21.7% 前週 +20.4% | RTX・Huntington Ingallsが上振れ | ▲2.83% | — |
| 公共 | +17.2% | AES・WEC Energyが上振れ | ▲0.69% | 守りとして買われなかった |
| 通信 | +14.1% 前週 +20.5% | Charter Communicationsの赤字で下方修正 | +4.89% | 増益率は下がったが首位 |
| ヘルスケア | +9.3% 前週 +5.2% | Pfizer・Moderna・CVS・Amgenが上振れ | ▲0.04% | 上方修正でも横ばい |
| 生活必需品 | +7.5% | — | +0.74% | — |
| 金融 | +6.4% 前週 +5.5% | Allstate・Aflacが上振れ | +1.15% | 増益率は下位でも上昇 |
| 一般消費財 | +3.9% | Amazonが週 +7.88% | +1.91% | 増益率は最下位でも上昇 |
予想PERは15.43倍で、これまで記録してきた範囲の下限を割った。規制への警戒で倍率は縮んだが、AMDの強い見通しはAI需要が続くことを示す。11/17の決算まで判定は保つが、確信度は下げた。
- 目標株価
- コンセンサス $327.14(+75.3%)/自己評価 $285 → $255(+36.6%)
- 直近決算
- Q2 FY2027 売上 $96.2B・データセンター $89.0B・粗利益率 75.0%。Q3見通しは $108B
- カタリスト
- 11/17 決算・Vera Rubinの量産
- 最大リスク
- 12月の利上げ・データセンター規制
決算は予想を上回り、Q4の売上見通しも約$17Bと強い。それでも買いにしないのは、手元に残る現金が前年比 ▲71% と細り、在庫が膨らんでいるためである。粗利益率の見通し55%は製品構成の変化によるものと判断した。
- 目標株価
- コンセンサス $656.24(+46.1%)/自己評価 $560 → $520(+15.8%)
- 直近決算
- Q3 売上 $13.38B(+45%)・データセンター $8.55B(+97%)・EPS $2.09(予想 $1.94)
- カタリスト
- 次世代AI半導体の量産・2027年売上 +80%超の見通し
- 最大リスク
- 12月の利上げ・現金の流出と在庫
7〜9月期の売上は +42.2% と強いが、12月期の見通しは前期比 ▲1%(中央値)で伸びが止まる。一時的な押し上げ要因 $53M がなくなり、供給制約も続く。業績の拡大は後半に入ったとみる。
- 目標株価
- コンセンサス平均 $93.29(+59.9%)/自己評価 $65(+11.4%)
- 直近決算
- 売上 $1.622B・粗利益率 66.5%・EPS $0.97
- カタリスト
- データセンター向け年 $1B・供給制約の解消
- 最大リスク
- 業績の山越え・半導体全体の倍率の縮小
決算シーズンは「多くが上回り、株価は反応しない」で終盤へ
今週のトピックS&P500の88%が発表を終えた。上回った幅は4号続けて縮んだあと、今週は +2.7% へ戻した。それでも株価の反応は平均を下回る。
- 売上の上振れ
- 74%(5年平均 70%)。増収率 +14.3% で11業種すべて増収
- Q4の見通し
- 下方修正32社・上方修正43社。下方修正の比率43%(5年平均 60%)
- Q4のEPS予想
- $94.63(9/30時点 $93.49)
- 利益率
- 14.9%。2009年以降で過去2番目の高さ
- 目標株価
- 9,306.85(11/5終値比 +26.6%)。ITは +44.1% と最大
アナリストは利益予想も目標株価も下げていない。市場が払う倍率だけが下がっている(推測・確信度:中)。AI株が投資の回収で選別される流れは米国株市場分析|AI株は投資額でなく回収で選ばれるで整理した。
次に確認すべきこと
日付順| 時期 | イベント | 注目点 |
|---|---|---|
| 11/10 | 米CPI(消費者物価指数) | 12月の利上げ観測が強まるか |
| 11/12 | Applied Materials 決算 | 半導体製造装置の受注 |
| 11/17 | NVIDIA 決算 | Q3見通し $108B の達成と株価の反応 |
| 12/9 | FOMC | 利上げの有無と追加の示唆(利上げ観測 約70%・報道) |
| 継続 | SOXの水準 | 10,259の回復で中立(弱気寄り)へ、9,011割れで弱気を深める |
| 継続 | S&P500・VIX | 7,060割れで弱気を深める、VIX 20未満で戻す |