米国株市場分析 ― 半導体の急落を相場全体の崩れと読まない
10/30はIntelの見通し未達(▲28.58%)を起点に、半導体指数SOXが1日で ▲7.20%、Nasdaq100も ▲3.46% と急落した。しかし週間で下げた業種はハイテクと通信の2つだけで、残る8業種は上昇し、S&P500は週 ▲0.57% にとどまる。Q3の増益率は +30.2%、Q4の見通しを下方修正した企業の比率は40%と5年平均の60%を大きく下回る。不安はテック株に集中しており、市場体温は中立(弱気寄り)に据え置く。
結論:問われているのはAIの需要よりも、投資に耐える資金力である
売りはテック株に集中Intelの売り材料はPC向けの減速で、データセンター向けは +78% と強い。巨大IT 3社も設備投資を実質的に減らしていない。それでも株価が下がるのは、AI需要の有無ではなく、投資が現金を食う速さと回収の時期が問われているからである(確信度:中)。回収を問う流れは米国株市場分析|AI株は投資額でなく回収で選ばれるで整理した。
強気にしないのは、金利の上昇圧力が消えていないからである。FOMCは据え置いたが2名が利上げを主張し、9月のPCE物価は3.6%、原油は $100 を超えたまま。弱気にしないのは、業績が強く、売りの広がりが2業種に限られるからである。
今週の3つの変化
- 起点 IntelのQ4見通しが半導体全体の売りを呼んだ売上見通し $15.5B は予想 $17.1B を、EPS $0.25 は予想 $0.43 を下回った。AI向けへの生産の移行でメモリ価格が上がり、PC需要を圧迫している(報道)。SOXは月〜木の +6.85% をほぼ1日で失った。半導体の崩れの始まりは米国株市場分析|指数の小幅安は半導体の崩れを隠すで分析した。
- 資金 設備投資を減らさなくても巨大ITは売られたAlphabetは10/29に約 ▲12.6%(報道)。手元に残る現金はAlphabetが ▲$9.1B(Q3)、Amazonが ▲$42.4B(過去12か月)。Microsoftの設備投資 $175B→$170B はGPUの供給遅れによる先送りで、3社とも2027年は増額方向である。
- 逆転 増益の主役が巨大ITから残りの企業へ移った巨大IT 7社のQ3増益率は +22.6%(9/30時点 +33.6%)に下がり、残り493社の +32.6% を下回った。実現すればQ4 2022以来。ただしAlphabet・Amazon・Metaは評価損や訴訟費用などの一時要因を含む。
先週の見立ての答え合わせ
- △巨大IT 3社の設備投資の削減・据え置きを弱気へ下げる条件とした文言上は該当した。理由は供給側で2027年は増額方向のため、需要の後退とは判断せず下げなかった
- ×NVIDIA 買い:週 ▲3.00%外れ。SOX(▲0.84%)も下回り、同業を上回る流れは4週で止まった。判定は11/17の決算まで維持する
- ×CoreWeave 売り:週 +1.16%小幅に外れ
- ×Teradyne 買い:週 ▲11.16%外れ。今週の決算を受けて中立(強気寄り)へ下げた
- ○Lam Research 中立(強気寄り):週 +3.92%当たり
体温を動かす条件
- ↓SOXの終値が 10,259 を割る、VIXの終値が25を超える、またはWTI原油 $110 超が定着する弱気へ引き下げる
- ↓AMD・NVIDIAの決算でデータセンターの見通しが失望を招き、半導体安が連鎖する弱気へ引き下げる
- ↑SOXが週間プラスに戻り10/30の安値圏を保つ、AMDの決算に株価が上昇で反応する中立へ戻す
主要指標
10/30 終値| 指標 | 終値 | 前日比 | 週間 |
|---|---|---|---|
| S&P500 | 7,580.07 | ▲1.82% | ▲0.57% |
| Nasdaq100 | 28,384.85 | ▲3.46% | ▲1.98% |
| SOX 半導体 | 10,688.80 | ▲7.20% | ▲0.84% |
| VIX | 19.42 | +12.91% | ▲0.15% |
| 米10年債 | 4.93% | ▲6bp | ▲6bp |
| 米2年債 | 4.56% | ▲5bp | ▲13bp |
| ドル円 | 157.52 | ▲0.08% | +0.45% |
| Gold先物 | $3,884.90 | ▲3.63% | ▲3.12% |
| WTI原油 | $102.95 | +0.93% | ▲0.31% |
株が急落しても金は買われず、10年債の利回りも大きくは下がらなかった。10年債と2年債の差は38bpで、4月末の52bpから縮んでいる。FOMCは政策金利3.75〜4.00%を据え置き、Q3のGDPは +3.4% だった。
週間で下げたのはハイテクと通信だけだった
週間騰落率セクターETFと半導体指数の週間騰落(10/23比)。中央の縦線がゼロ。
S&P500は週 ▲0.57%で、10業種のうち8つが指数を上回った。先週までエネルギーが目立っていた上位に、ヘルスケア・素材・公共が並んだ。守りの業種への資金移動が広がっている(推測・確信度:中)。
1日の急落は半導体に集中し、巨大ITは1%台で済んだ
10/30 前日比主な半導体と巨大ITの10/30の下落率。右端がゼロで、左へ伸びるほど下げが大きい。
半導体は軒並み5〜11%下げ、NVIDIAも ▲4.22%。巨大ITは決算後に売られたAlphabetも10/30は ▲1.40% にとどまり、Amazonは決算が未達でも日中の安値から戻して引けた。Intelの悪材料が同業へ広く波及した1日である。6月のIntel急騰の経緯はGoogle注文でIntel急騰→翌日-2%、3つの理由で解説した。
業績予想と株価:増益率の高い業種ほど買われているわけではない
今週の分析の核| セクター | Q3増益率 | 内訳を開けると | 今週の株価 | 整合 |
|---|---|---|---|---|
| エネルギー | +146.4% 前週 +136.0% | 5週続けて上方修正。原油のQ3平均は前年比 +32%。石油精製・販売は +536% | +1.00% | 増益率は最大でも株価の伸びは下位 |
| IT | +67.5% 前週 +65.6% | 半導体(+132%)を除くと +27.2% | ▲2.03% SOX ▲0.84% | 増益率2位でも下落 |
| 素材 | +30.6% | 金属・鉱業 +56% | +2.79% | 業績と株価がそろって強い |
| 通信 | +20.5% 前週 +39.8% | AlphabetのEPSが予想 $3.02 に対し $2.12。株式の評価損 $8.7B を含む | ▲5.32% | もっとも売られた |
| 工業 | +20.4% 前週 +17.6% | Bloom Energy・RTXが上振れ | +1.69% | — |
| 公共 | +12.3% | — | +2.04% | 守りとして買われた |
| 金融 | +5.5% 前週 +4.6% | Goldman Sachs・Capital Oneが上振れ | +1.09% | — |
| ヘルスケア | +5.2% 前週は減益 | Eli Lilly・Merck・Bristol Myers Squibbが上振れし増益へ転換 | +3.12% | もっとも買われた |
| 生活必需品 | +5.1% | — | +1.31% | 増益率は下位でも上昇 |
| 一般消費財 | +2.9% | — | +2.02% | 増益率は最下位でも上昇 |
PC向けの減速が来年上半期まで続く見通しで、利益率も下がる。データセンター向けは +78% と強いため売りにはしないが、下方修正が一巡するまで買わない。
- 目標株価
- 10/30に変更した8社の中央値 $77.5/自己評価 $70(+6.4%)
- バリュエーション
- 2027年度予想PER 31.3倍(予想の下方修正前の可能性あり)
- 直近決算
- Q3 売上 $16.5B・EPS $0.52。Q4見通しは売上 $15.5B(予想 $17.1B)・EPS $0.25(予想 $0.43)
- カタリスト
- PCの底打ち・サーバー向けCPUの需要
- 最大リスク
- 利益予想と目標株価の追加引き下げ
株価が下がって上値余地は戻ったが、11/3の決算前なので買いには上げない。Intelが示したサーバー需要は追い風、PC減速とメモリ高は逆風で、両面ある。
- 目標株価
- コンセンサス $640.21(+26.8%)(急落前の値)/自己評価 $600 → $560(+10.9%)
- バリュエーション
- 2027年度予想PER 31.7倍
- 直近決算
- Q2 売上 $11.5B(+50%)。Q3見通しは $13.0B±$0.3B
- カタリスト
- 11/3 Q3決算・OpenAI向け1GWの配備開始
- 最大リスク
- 決算後の値動き・PC向けへの波及
売上とEPSは小幅に予想を下回ったが、AWSが +39% で上回った。買いの根拠は崩れていない。ただし手元に残る現金の赤字が大きく、目標は下げた。
- 目標株価
- コンセンサス $331.82(+38.1%)/自己評価 $300〜320 → $285(+18.6%)
- バリュエーション
- 2027年度予想PER 22.8倍
- 直近決算
- Q3 売上 $201.94B・EPS $1.89・設備投資 $77.3B。過去12か月のフリーキャッシュフロー ▲$42.4B
- カタリスト
- AWSの40%超成長・提供能力の拡大
- 最大リスク
- 現金流出の長期化・金利上昇局面での連れ安
Q3は予想を上回ったが、売上が4四半期にわたり横ばいで伸びが止まった。Q4のEPS見通しも前期を下回る。売上の伸びが戻るまで買いには戻さない。
- 目標株価
- コンセンサス $424.67(+54.8%)/自己評価 $420 → $330(+20.3%)
- バリュエーション
- 2027年度予想PER 23.1倍
- 直近決算
- Q3 売上 $1,306M・EPS $2.29。Q4見通しは売上 $1,250〜1,350M・EPS $1.95〜2.25
- カタリスト
- 次回決算の2027年Q1見通し・メモリテスターの受注
- 最大リスク
- メモリ投資の先行き・半導体全体の評価倍率の低下
決算は「多くが上回るが、上回り方は縮み続ける」
今週のトピックS&P500の60%が発表を終えた。予想を上回る企業は多いが、上回った幅は +4.9% → +2.6% → +2.1% → +1.9% と号を追うごとに縮んでいる。
- Q3の増益率
- +30.2%(前週 29.5%・5年平均 13.3%)。実現すれば3四半期連続で25%超
- Q4のEPS予想
- $94.79。10月に +1.4% と上方修正された(5年平均は ▲1.1%)。エネルギーの +20.3% が牽引
- 上振れ企業の株価
- 発表前後で平均 +1.6%(5年平均 +0.9%)
- 売上の上振れ
- 70% で5年平均と同じ
- 予想PER
- 18.7倍(5年平均 19.8倍・10年平均 19.1倍。10/29終値基準)
高い増益率はすでに予想に織り込まれている。業績が崩れていなくても、株価を押し上げる驚きは小さくなった(推測・確信度:中)。
次に確認すべきこと
日付順| 時期 | イベント | 注目点 |
|---|---|---|
| 11/2 | Apple 決算・ISM製造業 | メモリ高のコストとiPhone |
| 11/3 | AMD 決算・米中間選挙 | Q3見通し $13.0B の達成、PC減速の波及、データセンターの見通し |
| 11/4 | ISMサービス | 物価指数 |
| 11/6 | 10月雇用統計 | 12月の利上げを判断する材料(前回 2.9万人・予想 6.5万人) |
| 11/17 | NVIDIA 決算 | データセンターの需要と売上見通し |
| 来週 | S&P500の140社が決算 | 上回った幅の縮小が止まるか |
| 継続 | SOXの水準 | 10,259(高値比 ▲30%)を割れば弱気へ |
| 継続 | VIX・WTI原油 | VIX 25超、原油 $110 超の定着で弱気へ |