このブログのタイトルには、読者(新社会人に向けて書いています)に投資としておススメしたいことのほか、やってはいけないことも伝えたいという思いから、『やってイイこと/ワルイこと』というメッセージを入れています。
そして今回は『やったらワルイこと』を書く最初の記事になります。
先に結論ですが、『SBIラップ』は手数料が高いにもかかわらず、その先端AI技術によるリバランスはマーケットの動きについていけておらず、運用成績の悪い商品となっています。運用成績は他のロボアド銘柄どころか手数料が格段に安い4資産均等ファンドにも負けています。
基本情報
✅投資一任手数料:0.660%
✅実質的な信託報酬:0.1906~0.6406%
✅運用プロセス:先端AI技術×伝統的金融工学
✅8種類の資産へグローバル分散投資
✅毎月リバランス
手数料と信託報酬がかかるとあります。この仕組みについては後で詳しく説明します。
そもそもSBIラップってどんな商品?
SBIのホームページにアップされている情報から特徴をピックアップしました。
入金だけしたら後はすべて「おまかせ」の資産運用が売りです。確かに楽ですね。
先端AI技術と伝統的金融工学を駆使して、リターンが最大になるよう投資対象を選んでいるようです。
投資先は8種類、株式(米国/先進国/新興国)、債券(米国債/米国ハイイールド債/新興国債)、米国不動産、金に投資し、毎月ダイナミックに投資配分を変更しています。毎月リバランスする、というのはなかなかできることではありません。マーケットの動きにいち早く追いつきそうな響きですね。
ちなみにあの『ウェルスナビ』は年に3回程度、と言われています。
ここまでに限ったらとても優秀そうです。スゴイ運用成績をたたき出してくれそうで期待しかありません。
『全部10万円ずつ買ってみた』での運用成績
私は実際に『SBIラップ』に投資していました。『全部10万円ずつ買ってみた』企画の第1期、2022年10月から2023年5月までの期間、ロボ・アドバイザー商品として『SBIラップ』を実際に10万円分購入しています。他にもロボアド銘柄としては『楽ラップ』と『ウェルスナビ』、バランス型銘柄として『ニッセイ・バランス(4資産均等)』も10万円ずつ購入していました。
その時の評価額の順位の推移をグラフにしたのがこれです。2022年10月に全18銘柄を購入し、評価額を多い順に並べたランキングの推移となります。
ランキングの真ん中あたりで奮闘しているのが『ウェルスナビ』です。一方で2023年1月下旬から最下位争いをしているのが『SBIラップ』です。『ニッセイ・バランス(4資産均等)』と較べても8か月間を通してほぼ運用成績で負けているという結果でした。
この成績の悪さはどこから来たのか、分析してみました。
先端AI技術によるリバランス
2022年10月から2023年5月までの間、先端AI技術がどのようにリバランスをしたのかを見ていきたいと思います。
2022年10月の購入時点では株式の資産構成比率はこのようになっていました。
米国株式 29.6%
先進国株式 33.2%
新興国株式 2.0%
※ちなみに2022年10月は今から振り返れば米国マーケットの大底を付けたタイミングでした。
そこからわずか4か月でこのバランスが大きく変わっていきました。
こちらが動きのあったタイミングでの資産構成比率です。
購入からわずか4か月後の2023年2月11日には米国株式が4.3%、先進国株式が2.6%と、比率を大きく落としたのに対して、新興国株式の比率が43.4%と大幅に上げています。
ちなみにこの期間のマーケットがどうなっていたか、S&P500と上海総合株価指数の動きを較べてみました。
オレンジの線がS&P500、青の線が上海総合株価指数です。(期間:2022年10月~2023年7月)
S&P500は22年10月から緩やかに回復しているのに対し、上海指数は11月に底を付けた後、回復はしていますがS&P500に較べるとその力は弱く、5月以降緩やかな下落基調となりました。
2023年5月末、これは『全部10万円ずつ買ってみた』の第1期終了時なのですが、『SBIラップ』を売却しました。その時の資産構成比率はこのようになっていました。
新興国株式の比率は48%まで拡大していたのに対して米国株式・先進国株式はわずか2%と、結果として米国市場の回復をみすみす逃してしまっています。
2月からの評価額ランキングの地を這うような低迷は、リバランスの失敗と、その失敗に早期に対策できなかったことが原因と思われます。完全に当初の期待を裏切られました。
手数料
続いてコストの側面はどうなっているか、『SBIラップ』の手数料について見てみましょう。
『SBIラップ』の手数料は投資一任手数料+信託報酬+投資するETFの経費率の3階建てになっています。
投資先ファンドの信託報酬の説明を見ると、”信託報酬”の他に”実質的な信託報酬”とあります。この『実質的な信託報酬』が「信託報酬+投資するETFの経費率」となります。
一つを例に取って見てみます。
”ラップ専用SBI米国株式”の実質的な信託報酬は”0.1906%”で、これは”信託報酬0.1606%”+”投資対象のVTIの経費率0.03%”という計算になります。
各投資対象毎の信託報酬は次のようになっています。
それに投資一任手数料0.660%が加わって全ての経費となります。
この”ラップ専用SBI米国株式”は投資先が VTI の、SBIラップでしか買えない商品です。普通に買うなら『SBI・V・米国株式』を買うことができます。
ではこの2つの実質的な信託報酬を較べてみましょう。
ラップ専用の方が倍以上高く設定されていることが分かります。
つまりSBIラップに投資すると、投資一任手数料を支払った上で、割高な信託報酬の商品を買うことになる訳です。
まとめ
『全部10万円ずつ買ってみた』を始める時、投資をAIに任せてみるロボアドバイザーに漠然とした魅力を感じて構成銘柄に組み入れてみたものの、結局ロボアドはSBIラップだけ外してしまいました。
その理由は上で述べたとおり、成績が振るわないこと、リバランスの意図が理解できないこと、手数料が必要以上に割高に感じられたこと、他にもここには書いていない細かい不満が溜まったことも重なっています。
もし今『SBIラップ』を検討している方がいれば、セールストークだけで選ばず、このブログを参考に決めていただければ幸いです。
最後に私の個人的な意見ですが、『ロボアド買うならウェルスナビが断然おススメ』です。
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